「急性虫垂炎になるとおなかのどこが痛むの?」
「急性虫垂炎になったら必ず手術しなきゃいけない?」
このようなお悩みがある人におすすめの記事です。
急性虫垂炎は誰でも起こりうる病気です。幼児から高齢者まで幅広い年代で発症します。
急性虫垂炎の初期はおなかの痛みと認識し、症状に気づかない場合が多いことが特徴です。症状が進行すると、痛みは徐々に右下腹部に移動します。
症状の程度によって、保存療法や手術療法が選択されることが基本です。
しかし、急性虫垂炎は予防できないと思っていませんか?実は日常生活を少し見直すだけでも予防につながります。
この記事では、急性虫垂炎の症状や診断や治療法、日常生活の過ごし方について詳しく解説していきます。急性虫垂炎について知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
急性虫垂炎とは
急性虫垂炎とは、大腸の入口近くに垂れ下がった虫垂が炎症を起こした状態のことをいいます。これは、食べかすが固まった糞石や異物などが虫垂の空洞を閉鎖して、二次的に細菌感染を起こすことが原因です。
急性虫垂炎は「盲腸」といわれますが、実際は盲腸の一部である「虫垂」が炎症した病気です。
幼児から高齢者まで、どの年代でもかかる可能性があります。幼児の場合は、症状の訴えが難しく発見が遅れやすいです。
急性虫垂炎は進行が早いため、重症化すると虫垂に穴があくことがあります。穴があくと、お腹の中に細菌が散らばって腹膜炎を起こす可能性があるため、早めに受診しましょう。
急性虫垂炎の症状と種類
急性虫垂炎には腹痛などの症状があり、病気が進む段階で症状が変化していくことが特徴です。
ここでは、症状と急性虫垂炎の種類について解説します。
急性虫垂炎の症状
急性虫垂炎を発症すると、以下の症状が現れます。
- 腹痛
- 食欲低下
- 吐き気、嘔吐
- 下痢、便秘
- 発熱
特徴的な症状は腹痛です。初期の頃はおなか周りが痛くなり、徐々に右下腹部の方に移動して、痛みが強くなっていきます。胃の周辺が痛くなるため、胃炎など別の病気と診断されてしまうほど、最初は判別がつきにくい症状です。
症状が進むと食欲がなくなり、吐き気や嘔吐、下痢、便秘、発熱がみられます。
急性虫垂炎は進行が早い病気です。人によっては、最初の症状が出てから24時間程度で虫垂に穴があくこともあります。
右下腹部の痛みと併せて、消化器系の症状があらわれたら急性虫垂炎を疑いましょう。
急性虫垂炎の種類
急性虫垂炎には、以下のような種類があります。
軽症 重症 | カタル性 | 初期の粘膜が炎症をおこした状態で、痛みの場所や強さが不安定になる |
蜂窩織炎性 (ほうかしきえん) | 痛みが右下腹部に移動し、虫垂の壁全体が炎症を起こす | |
壊疽性(えそ) | 虫垂が腫れて、右下腹部の強い痛み、発熱、嘔吐、下痢の症状があらわれる | |
穿孔性(せんこう) | 虫垂に穴があくが、少し痛みがやわらいで、腹膜炎や膿瘍(のうよう)を形成する |
※カタル性:粘膜が炎症している状態
幼児や高齢者は上手く症状を伝えられないため、急性虫垂炎を見逃し、重症化するケースがあります。腹痛のほかに嘔吐や下痢などの消化器症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。
急性虫垂炎の検査と診断方法
急性虫垂炎の検査と診断方法は、以下のとおりです。1つの検査だけでは診断が難しいため、複数の検査を組み合わせて確定診断します。
- 腹部触診
- 画像診断
- 腹部超音波検査
- 血液検査
それぞれ詳しく紹介していきます。
腹部触診
腹部触診は、おなかを直接触って観察することです。虫垂の近くにある「マックバーネー点」や「ランツ点」を押したり離したりして痛みを確認します。この2ヶ所は急性虫垂炎の場合、強い痛みを感じる部位です。
ただし、触診だけでは他の疾患との区別が難しいため、他の検査方法を組み合わせて確定診断を行います。
画像診断
画像診断では、腹部X線(レントゲン)や腹部CTを行います。おなかの中の写真で、虫垂の直径が6mm以上に腫れているか、虫垂にガスがあるかを確認できる有効な診断方法です。
腹部CTはおなかを輪切りにした画像で確認できます。虫垂の状態が明確になるため、他の病気との区別がしやすいです。
腹部超音波検査
おなかに超音波を当てて、おなかの状態を確認する検査です。急性虫垂炎の場合は、大きく腫れた虫垂や虫垂壁の厚さ、糞石などがみられます。ガスが多く溜まっていると状態を確認しにくいため、画像診断と組み合わせるとより正確に診断できます。
血液検査
採血をして、白血球数(WBC)や炎症反応(CRP)で細菌感染の有無を確認します。下痢や嘔吐がひどい場合は脱水状態の有無や程度も調べます。
急性虫垂炎の確定診断は、血液検査だけでは不十分です。触診や画像診断を組み合わせて確実な診断を行います。
急性虫垂炎の治療方法
急性虫垂炎の治療法は、以下の2種類です。場合によっては、2つを組み合わせることがあります。
- 保存療法
- 手術(開腹・腹腔鏡)
それぞれ詳しく解説していきます。
保存療法
保存療法とは、以下のような手術をしない治療方法のことをいいます。
- 絶食
- 安静
- 薬物療法(抗菌薬など)
なお、絶食する理由は、腸を安静にするためです。急性虫垂炎は細菌感染なので抗菌薬で治療をおこないます。
保存療法は、直接原因を取り除く治療ではないため、抗菌薬が十分に効かなければ再発の可能性もあります。保存療法で改善が見込めない場合や、改善しても再発を繰り返す時に検討されるのが手術です。
早期に治療を開始すれば、薬物療法のみで改善することが多い病気です。いつもと違うおなかの痛みを感じたら、早めに受診しましょう。
手術
急性虫垂炎の手術は、おなかを開く開腹手術と、小さな穴をあけてカメラを挿入して行う腹腔鏡手術の2種類があります。
【開腹手術と腹腔鏡手術の違い】
開腹手術 | 腹腔鏡手術 | |
---|---|---|
傷 | 比較的残りやすい(傷は約5㎝) | 小さくて目立ちにくい(傷は小さい穴が3か所) |
手術時間 | 50分程度 | 80分程度 |
回復までの時間 | 時間がかかる | 比較的短い |
合併症 | 切開した部分の感染、腸閉塞 (腸が塞がりやすい) | 膿瘍が残りやすい |
治療費・入院期間 | 腹腔鏡手術の方がやや治療費がかかるが、入院期間は短い傾向 |
開腹手術と腹腔鏡手術には、それぞれメリットとデメリットがあります。おなかを切開する開腹手術に比べて、腹腔鏡手術の方が時間はかかりますが傷が小さいため、患者の負担が少ない治療法です。
急性虫垂炎が進行して、腹膜炎や膿瘍形成など重症化している場合は、緊急手術の可能性が高くなります。右下腹部に激しい痛みを感じた時は、早めに医療機関を受診しましょう。
急性虫垂炎を予防するには
急性虫垂炎は原因がはっきりわかっていないため、確実に予防することは難しい病気です。しかし、日頃から気をつけて生活することで、急性虫垂炎の予防を期待できます。
普段から以下のことに気をつけましょう。
- 適度な運動習慣を身につける
- 栄養バランスの良い食事をとる
- ストレスや疲れを溜めない
それぞれ詳しく解説していきます。
適度な運動習慣を身につける
日頃から、適度な運動習慣を身につけましょう。病気を予防する強い体を作るためには、体を動かすことが大切です。
便秘傾向の人は、糞石が虫垂に溜まりやすいため、急性虫垂炎を発症しやすいといわれています。適度な運動をすると腸が活発になるため、便秘の解消につながるでしょう。
運動が続かないという人は、1日に5〜10分程度の体操や軽い運動を取り入れてみてください。
栄養バランスが良い食事をとる
毎日、栄養バランスが良い食事をとりましょう。
便秘傾向の人は急性虫垂炎を発症しやすいため、食事に気を付けるだけでも予防につながります。食物繊維やヨーグルト、納豆など整腸作用のあるものがおすすめです。
また、暴飲暴食は急性虫垂炎だけでなく、他の病気の原因にもなります。特に、脂っこい食事や甘い食事など偏ったものばかり食べる人は注意しましょう。
ストレスや疲れを溜めない
普段からストレスを溜めこむ人や疲れがとれない人は要注意です。ストレスや疲れは、溜めこむと、自律神経のバランスが崩れて病気にかかりやすくなります。
以下のような状態の時は注意が必要です。
- 食欲不振
- 頭痛
- イライラ
- 集中力低下 など
定期的にストレスを発散したり、十分な休息を取ったりして、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
【まとめ】おなかの痛みが動く場合は受診しましょう
急性虫垂炎とは、大腸の入り口付近にある虫垂に異物や糞石が詰まって炎症を起こす病気です。はっきりとした原因はわかっていませんが、細菌感染により強い腹痛や嘔吐などの症状を引き起こします。
初期の頃はおなか周りが痛むため、胃炎など別の病気と間違われることもあります。症状が進行すると、右下の回盲部が痛み始めて気づくことがほとんどです。
軽症の場合は、薬物療法で改善が見込めますが、症状が進行すると手術で虫垂を切除することが多い病気です。
経過が早いことが多く、重症化すると腹膜炎などの重篤な病気を引き起こす可能性があります。いつもと違うおなかの痛みを感じたら、早めに病院を受診しましょう。